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テレワークの普及率と課題

テレワーク普及の可能性はあるのか

企業にとっては従業員の雇用が確保できること、働く人にとっては自分らしく自由に働けることがテレワークの大きなメリットになります。ただし、日本では従来からの形態による雇用を続ける企業が多く、テレワークの普及率は高いとは言えないようです。

平成29年に総務省が行った「ICT利活用と社会的課題解決に関する調査研究」の結果では、日本の企業の多くを占める従業員300人以下の規模の企業でのテレワークの普及率は約3%、従業員300人超の規模の企業でも約20%となっています。

ちなみに普及率が最も高いのはアメリカの約85%で、労働者の10人に1人程度(労働者全体の約9%)が実際にテレワークで働いているというデータがあります。

企業がテレワークを実際に導入するためには、社内制度と情報システムの両方を整えることが必要です。

社内制度はテレワークで働く労働者の人事評価や労務管理に関する制度であり、情報システムはテレワーク勤務を可能にするICT(情報通信技術)設備などがこれに該当します。

従業員300人以下の規模の企業の約20%では、既に社内制度と情報システムの両方の整備が確認されています。これは導入のための課題の解決により、テレワークが今後さらに普及する可能性が高いことを示していると言えます。

さらに約10%の企業では社内制度のみが整備されており、約25%の企業では情報システムのみが整備されています。合計で約35%の企業は今後の一方の整備により、テレワークの導入が可能だと判断できるでしょう。

既に両方を整備する20%と合わせると、約55%の企業には潜在的なテレワーク普及の可能性があると考えることができます。

 

テレワーク導入の課題とは

それでは普及の可能性がある企業が実際にテレワークを導入するためには、具体的にはどのような課題を解決することが必要なのでしょうか。

「ICT利活用と社会的課題解決に関する調査研究」によると、他企業との競争力を高めようとする目的意識が強い企業では既にテレワークを導入済みであることが多くなっています。

導入の理由として「顧客満足度の向上、営業力の向上」「社内事務の迅速化」「イノベーション創出の環境づくり」などを挙げる企業では、テレワークの普及率が高いという傾向が見られます。

一方で「人材の採用・確保、流出の防止」「育児による退職の防止」「介護による退職の防止」などの理由を挙げる企業では、テレワークの普及率は低めとなっています。

さらにテレワーク導入済みの企業では「情報セキュリティの確保」「対象業務が絞られること」が課題だと考えることが多いのに対して、導入を検討する企業では「適正な労務管理」「適正な人事管理」「テレワークに対応した社内制度作り」や「社員のテレワークへの理解」「管理職のテレワークへの理解」「経営者のテレワークへの理解」などを課題だと考えることが多くなっています。

これらの結果から判断すると、今後のテレワークの普及のためにはまずは企業の意識を改革することが必要になります。

企業体制の維持を重視する従来からの考え方では、テレワークの導入はなかなか進まないようです。他企業との競争力を高める意識を持つことでテレワークの普及を推進し、さらに企業全体の労働生産性の向上が可能になります。

具体的には社内制度や情報システムを整備することや経営者や管理職、社員までの全社的な理解を得ることが必要だと言えるでしょう。新しい働き方への取り組みが効率的な企業活動を実現し、さらに企業の業績が向上する好ましい循環が生まれることになります。

 

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