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徐々に広がりを見せるテレワーク市場

テレワークとは?

ICTを活用した、時間と場所を有効に活用できる柔軟な働き方のことをテレワークと言います。

就業形態でみると企業型、自営型の2つがあります。勤務形態でみると、サテライトオフィス勤務、モバイル勤務、在宅勤務の3つがあります。

この記事では企業型のテレワークの市場動向について説明します。

 

テレワークする人は実際、増えているのか調べてみた

まず、総務省の統計による企業のテレワーク導入率の推移を見ると、2012年度には11.5%、それから2015年度までに16.2%まで上昇しますが、その後下がり始め、2017年度は13.9%となっています。

次に国土交通省が実施しているテレワーク人口実態調査を見ると、2000年度から2010年度までは300万人前後だったのが、2012年度に930万人と急激に増加します。その後、2014年度には530万人まで下がり、2017年度は微増して560万人となっています。

こうして見ると、2012年度~2014年度までがピークでその後大きく減少し、現在は微増していますが、明らかな増加傾向とは言いにくいことがわかります。「この先拡大しないのでは?」と思われるかもしれません。

しかし、この推移の変化には理由があります。2011年度に東日本大震災が発生したために、テレワークで働かざるをえない人が急増しました。これに対してICTのサポートも進化していったため、震災を受けた地域だけでなく、他の地域でも震災による分散ワーク体制の必要を検討し始め、テレワーク推進の気運が高まったのです。このため、テレワークの普及率と人口増加が一気に加速しました。

ところが、被災から立ち直る企業が増え緊急事態が解消していくと、今までのようにオフィスで働くことが可能になり、テレワーク人口は減少し、政府の働き方改革を受けて、また増えつつあるというのが急増と急減の実態でしょう。2010年度から見れば7年で200万人増加しているのですから、増えているといっても間違いではありません。

 

テレワークに対する企業や労働者の意識

平成30年4月に総務省が発表したレポートによれば、国内の主要企業120社へのアンケートでテレワーク制度があると回答した企業は60%、予定があると回答した企業は21%、合わせて8割の企業がテレワーク制度の導入に意欲を見せています。

さらに、このレポートではテレワークを導入した企業の一社当たりの労働生産性は、導入していない企業の1.6倍と算出しており、企業にとっての導入メリットは大きいと判断しています。

また、IDCジャパンの調査によれば、2017年のテレワーク導入企業は14万社、導入率は全体では4.7%と低い値ですが、大企業だけ見ると、23.6%とほぼ1/4の企業が導入していることになります。

労働者の意識も、日本テレワーク協会の調査では5割以上の人が在宅勤務を利用してみたいと答えており、総務省の平成30年度版情報白書でも20代、30代の若い層でテレワークの利用に対して前向きな回答が5割近くを占めるなど、テレワークへの期待が高いことを表しています。

経営者側も労働者側もテレワークに期待しているのに、なぜテレワーク人口が増えていかないのでしょうか?

 

テレワーク普及を阻む問題

総務省の平成30年度版情報白書で挙げられている問題点として、日本の企業の大半を占める中小企業への普及率が小さいことが挙げられます。特に300人以下の企業では3%しか普及していません。

また、テレワークを導入済みの企業は、テレワークを企業競争力を高めるために導入しているのに対し、これから導入しようとする企業は、「育児・介護による人材の流出防止」といった福利厚生的な目的意識が高く、導入への強いモチベーションになっていないことも普及を阻むとしています。

技術的な面では、テレワークを導入するための環境整備ができていないことが挙げられます。

日本で最も広まっているテレワーク形態はモバイル勤務で、次いで在宅勤務、最後がサテライトオフィス勤務ですが、在宅やサテライトオフィスに対応できる環境が整備されていないことが挙げられています。また、技術面でも利用者意識でも、セキュリティの確保がテレワーク環境では十分にできないのも問題です。

このような問題がテレワークの普及を阻んでいると考えられます。

 

テレワーク市場の今後について

現状の問題について、日本政府も色々な施策を打ち出し始めています。専門のテレワーク推進体制を作り、意識改革、ノウハウ支援、導入補助、周知・啓発の4つの分野に分けて、対応する活動を始めています。

企業や労働者への働きかけが強まれば、先に述べたように潜在的にはテレワークへの期待は大きいのですから、テレワーク市場拡大の動きに弾みがつく可能性は大きいです。

何より、労働人口の減少が始まった日本では、生産性の向上、女性・高齢者の活用が不可避と言えます。テレワークの普及はこの問題に対する一つの回答でもあります。

個人的な期待も込めて、今後テレワークの利用が高まり、市場が拡大していくのではと予想します。

 

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